「相模の業務を後押しできるように、力添えをするっていうか、相模が建築士として更に実績を積めるようなサポートをしていくっていうのが、ファンクラブの会員の条件」

「え、それって、何だかマネージャーというか、秘書というか」

「そうだなあ。まだ主任という役職では秘書はつけてもらえないけど、あいつの忙しさを考えれば秘書が何人かいた方がいいだろ?それを察して、相模に惚れこんでる女性数人が相模の押しかけ私設秘書をかってでたんだ」

おしかけ私設秘書って、かなり強引なイメージがあるし、相模主任がそういうのを喜んで受け入れているとも思えないんだけど。

そんな私の気持ちがわかったのか、椎名主任はくすりと笑って小さく頷いた。

「単なる相模のファンで、側にいたいだけっていう女なら、相模も完全に排除していただろうけどな。
彼女たちは、確かに相模の見た目に惚れてあいつに近づいたのかもしれないけど、相模を通じて建築の面白さや、わが社のこれからを真面目に考えるようになったんだ。
同じ社内にいても、建築には関連が薄いスタッフ部門にいる女性が、自分の会社が携わっている商品のことを何も知らなかったり、商品の名前すら言えない状況に気づけば、それはショックだろう?」

「それって、私も……そうですよね?」

経理部IR課という、スタッフ部門ど真ん中に在籍している私は、まさにわが社の商品名すら完璧には言えない社員。

それを情けないと思うことも多いけれど、自分が今いる場所を考えれば仕方がないと、特に深く考えたこともなかった。