「夏乃さんは、恋愛に関しては弱すぎたんだね。そして、決してしてはいけないことをしてしまった。
相手を好きだからという理由だけで、自分の気持ちを押し付けてはいけないから……」

私の呟きに、歩は何度か頷いて、ぎゅっと私を抱きしめた。

「俺の弱さも、夏乃を追い詰めた」

呟く言葉に、私も頷いた。

私の場合は、別れたあとも歩を好きだという気持ちを捨てられずにいて、幸運にも歩も同じ気持ちだったというだけで恋心は成就し、周囲を傷つけることはなかった。

けれど、それは結果論だから。

私もひとつ間違えば、夏乃さんのように、他人を巻き込んで傷つける状況を引き起こしていたのかもしれない。

運が良かっただけ。

私の恋は、たまたま通じ合えただけ。

恋をするなら、どんな状況も受け入れる強さを持たなければいけない。

実らない、悲しい思いを受け入れる、覚悟と強さを持ったうえで、恋をしなければ、いけない。

そう思いながら、私は歩の背中に手を回した。