「……なんで、鷹司さんが?」



実はあたしあまり鷹司さんが好きではない。


優しいし、紳士だと思うんだけど頭では警報が鳴っている。


コイツには近付くな、と。


中で何かを企んでいるような、心の底では凄い事を考えていそうで心底怖い。



「あれ?梨香に言ってなかったっけ?」

「え?な、にを…?」

「あたしがなんで突然帰って来たと思う?」



なんで帰ってきたか?


みんなに会いたかったからじゃないの…。


あ、でもみんなに会いたかったら鷹司さんを連れて帰ったりなんかしないよね…。


嫌な予感がする…。


とてつもなく嫌な予感が…。


背中から冷や汗が出てくる。



「もしかして……」

「そのもしかして。あたし達、結婚する事になったの。だからお父さんに鷹司さんと結婚していいか聞きにきた訳」

「それでね、梨香ちゃん。梨香ちゃんにも聞きにきたんだよ。結婚してもいいかって。ハッキリ言って梨香ちゃん僕の事、苦手でしょ?」

「そんなことは…っ」



"ない"とは言い切れない言葉に詰まり、唇をギュッと噛み締めた。



「やっぱりね。確かに嫌われても無理はないと思う。だって清香と梨香ちゃんは本当に仲がいいから。お姉ちゃんを取られるのはあんまりいい気はしないよね」



ニコニコと話しかけてくる鷹司さんにあたしは俯く。