『……もう、オレではない誰かになってしまう。その前にお前に殺されたいんだ』
『いやっ……!あたしはアナタを殺せないっ!愛しているってアナタに伝えたでしょう?そんなあたしがアナタを殺せる訳がないわ!』
『君はオレに食われてしまう。一滴の血も残さずに死んでしまう。オレは君を殺したくなんてないっ……!殺す前にオレが死ぬ。だから、最期に君にお願いするんだ。オレを……、殺してくれ』
これはテレビの中の世界。
あたしは"ヴァンパイアの最期"という洋画を見ている。
父が見ていたのを見ていたら何故かハマっていた。
「死ぬしか選択肢ないのかな?他にもっと色々方法はあると思うんだけどな……。しかも好きな男の人を殺さないといけないなんてなんという拷問なの……」
ため息を吐きながらそう呟く。
まだ続いている洋画をみる気はもうしなかった。
「なんだ、梨香。もう見ないのか?」
「うん。なんだか飽きちゃって……」