開戦は突然だった。

常軌を逸するスピードで踏み出したフェンリル。

一気に接近してくると。

「むぅ!」

右の手刀で斬りつける!

まるで銘刀で撫で斬りにされたかのような鋭利さ。

受け止める為に掲げた左腕から、血飛沫が舞う。

尚も詰め寄るフェンリルに、牽制の前蹴りを放つ羅刹。

しかしフェンリルは容易く回避し、その回避の動きのまま、羅刹の背後まで回り込む!

(速い…!)