「もったいない」

 私が「もったいない」に値する人間とは思えない。清人は私には「もったいない」って思うけれども。

 「それでいいのか」

 それは、清人に聞いてみたい。聞かないけれども。

 授業があるから福間くんとは何度も顔を合わせるけれども、その後は込み入った話は特になかった。ただ、おごってもらったお礼はきちんと言った。普通の、ただの、食事をおごってもらったお礼だから、別段何もなく、普通に。

 他の同期がいる中で、込み入った、というか、なんというか、心を往復する言葉たちについての話を持ち出す気にはなれなかった。福間くんから持ちだされることもなく、お互い今まで通りの同期という関係に変化はなかった。微妙に狭く、意外と地獄耳が多い、「同期のいる場」という世界で、こっそりそういう話をするというのはお互いリスクが大きいことを理解しているからかもしれない。

 「それでいいのか」と「もったいない」が、不意に心の中を往復する。雨の予報と傘のマークが恨めしい。