「文献読んだり、レポートをまとめているときでも、メールを返してくれたり、『お茶入れよっか?』って気遣ってばかりだから、今日は全部やる。」
 「…何か悪いものでも食べた?」

 一瞬間が空いて、清人が笑いながら答えた。

 「違う。祖母ちゃんの教え。」
 「ありがとう。」
 「どういたしまして。座ってちょっと待ってて。」

 もう一度キスをして、清人はスーパーの袋を抱えて、キッチンに向かった。

 私、ちゃんと笑って返事出来ていただろうか。口元は笑って、目元が笑っていないような、変な感覚だ。素直に受け取っていいのかな。

もし、あの子が今日体調悪いって言っていたら、どっちを選んだ?

 清人の背中に無言で問いかけた。そんなことは露知らず、清人はうどんを作りはじめた。

 ふと背中の後ろがひやっとした。

 明日、清人の知らない人とランチするって言ったら、どんな顔するのかな。お礼とはいえ、よく考えてみるとおかしな話かもしれないと今更ながらに気がついた。だからと言って断る理由もないし、むしろおごってもらえるならなんていう、ずるい自分もいる。

 「それでいいのか」

 真意はどこにあるのか。