「………。」

「………。」


放課後。


部活も休みだし、2人で帰ることになったはいいけど…


チラッと佐々木くんを見る。

キレイな横顔が夕日に照らされて、
なんて素敵なんだろう。



佐々木くんは多分、
本当は情熱的で熱い人なんだと思う。



でも、とってもシャイだから大人しくみえるんだ。


それなら、緊張するけど私から話しかけなくっちゃね‼



「あのさ、昨日の金曜ロードショーみた⁉」

「ごめん、見てない。」



会話終了。



「そういえば、私すごいお蕎麦好きなんだよね!佐々木くんも好きかな?」

「俺、そば粉アレルギー。」



会話終了。




「あ、えっと…最近、血液型占いにはまってるんだけど、佐々木くんの血液型って…」


「測ったこと無くて分からない。」



会話終了。



ダメだ、全然うまくいかない。

思えば私は、佐々木くんの事をなにも知らない。



彼のことを何も知らない。
それどころか、佐々木くんのことをちゃんと好きかどうかも分からない。



こんな私が彼と付き合う資格、あるのかな。



そのとき


「なんも言えなくて、ごめんな。」



そう言って、佐々木くんの大きな手が私の手をとる。



ドキドキと私の鼓動が早まる。


「佐々木くん…?」

「俺、こうゆうの慣れてなくて。ごめん。」



佐々木くんの指先から震えや緊張が伝わってくる。




そして佐々木くんの手が離れていく。


「…あれ、」



私の手の中には一粒のキャンディーが握られていた。


ハチミツのど飴だ。




驚いて佐々木くんを見ると、

「笹川さん、鼻声だったから風邪気味なのかなぁって。」


そう言って、照れ臭そうに目をそらした。