「イノク、結界は弱まっていないか?」
「ええ、城を守護する結界ですから、いつもよりも強めにかけていますよ」
魔法関連の話しをするときだけ、この男の瞳は輝く。キラキラして子供みたいにはしゃいだしゃべり方で。
「そっか、ならいいんだけどさ…」
マルクは一度イノクから視線を外し、遠くで殺気を放つ人物をちらっと見てからもう一度イノクを見た。
「マオちゃんになんかした?」
「え、何もしていませんが」
「いや…何もしてないってことはないだろう、ほら見て!超怒ってる!こっち睨んでるよ!?」
「いやー…特別なにかしたとかはない、ような気もしない…か、な…はい。うん」
「…何したんだ」
「いや…数時間前のことなんですが」
*
久しぶりに街へ出たイノクは、魔法の増幅装置を魔法道具専門店へ持って行って今月の食費と生活費を得たあと、少し街を歩くことにした。
小さな子供達が走り回り、女学生が友達と笑いあいながらウィンドウショッピングを楽しんでいる。その中の一人にマルクの一人娘であるファミを見つけ、軽く会釈をすると、イノクに気づいたファミが笑顔で会釈した。
ファミが友達に連れられてまた別の店へ移動したのを見届け、また歩みをすすめる。
普段は家にこもってほとんど出てこないイノクにとっては街はいるだけで楽しい場所である。女の子たちにまぎれて見たことのある制服の女性がショーウィンドウをのぞき込んでいた。
少し考え、また悩み、財布を確認してまた悩む姿を見て、なんとなくその人物の正体がわかってきた。
「マオさん?」
「はい?」
くりん、と頭をこちらを向けてくるその無邪気な顔がキラキラして見える。
ああーやっぱ可愛いなーいつまで経っても子供みたいだなーあーやべえ可愛い。
「マオさん、何してるんですか?」
「ちょっと、買い物に…」
「へ〜…」
ちらっとショーウィンドウを覗くとそこはアイスの専門店だった、マオは無類のアイス好きで騎士団でも有名だ。ちょっと怒っていてもアイスを渡せばすぐ笑顔になるぐらいだ。
「さっきから悩んでいるようですが、どうかしましたか?」
「いや、あの、別に…」
「どれが欲しいんですか?」
「新製品って書いてある、あのピンクの…」
「? あれはジェラートですよ?」
「そうなんです、ここのお店、ジェラートも取り扱い始めたみたいで、本当はいつものかぽってするアイスが好きなんですがジェラートも挑戦したいなって…でもジェラートって高いんですね、びっくりです」
「いろんな味があるようですが、さくらんぼでいいんですか?」
「はい、本当はぶどうか抹茶で悩んで…あ、この抹茶シーナから輸入してるから美味しいですよ、きっと。苦味も少なくて 」
「じゃあ抹茶にします?」
「いえ、さくらんぼにします、じゃ、じゃあいってきます」
緊張した顔で店内に入ろうとするマオの袖を引っ張り引き寄せる。
「い、意地悪しないでください!」
「ここで待っててください」
「?」
イノクは女の子でいっぱいの店内に入り注文をして、ジェラートをもって出てきた。
「頑張っているようですから、僕からのご褒美です」
「イノクさぁん!!」
「はいはい落ち着いて、向こうにベンチがあるのであそこで食べましょうか?」
「はいっ!」
イノクにはマオが犬に見えた。
「美味しいですか?」
「んふぅ、おいひぃれふぅぅ」
ほっぺをツルテカさせてジェラートを頬張る、アイスを美味しそうに食べる大会があったらきっと優勝するだろう。
「でも、いいんですか?高いのに」
「いいですよ、あなたの笑顔が見られるのなら、安いものです」
「イノクさん…」
少し自分よりも年上のこの人のことがかっこよく見えた。
「マオさん、ここ、ついてますよ」
「へ?」
「ここです」
ぺろん、と頬っぺについたジェラートを舐めとった。
「ほら、取れました、ってどうしました」
「さ、最初からそういうつもりだったんですね!?不潔です!!」
半泣きになりながら逃げるマオを追いかけることもできずイノクは取り残されたのであった。
「ええ、城を守護する結界ですから、いつもよりも強めにかけていますよ」
魔法関連の話しをするときだけ、この男の瞳は輝く。キラキラして子供みたいにはしゃいだしゃべり方で。
「そっか、ならいいんだけどさ…」
マルクは一度イノクから視線を外し、遠くで殺気を放つ人物をちらっと見てからもう一度イノクを見た。
「マオちゃんになんかした?」
「え、何もしていませんが」
「いや…何もしてないってことはないだろう、ほら見て!超怒ってる!こっち睨んでるよ!?」
「いやー…特別なにかしたとかはない、ような気もしない…か、な…はい。うん」
「…何したんだ」
「いや…数時間前のことなんですが」
*
久しぶりに街へ出たイノクは、魔法の増幅装置を魔法道具専門店へ持って行って今月の食費と生活費を得たあと、少し街を歩くことにした。
小さな子供達が走り回り、女学生が友達と笑いあいながらウィンドウショッピングを楽しんでいる。その中の一人にマルクの一人娘であるファミを見つけ、軽く会釈をすると、イノクに気づいたファミが笑顔で会釈した。
ファミが友達に連れられてまた別の店へ移動したのを見届け、また歩みをすすめる。
普段は家にこもってほとんど出てこないイノクにとっては街はいるだけで楽しい場所である。女の子たちにまぎれて見たことのある制服の女性がショーウィンドウをのぞき込んでいた。
少し考え、また悩み、財布を確認してまた悩む姿を見て、なんとなくその人物の正体がわかってきた。
「マオさん?」
「はい?」
くりん、と頭をこちらを向けてくるその無邪気な顔がキラキラして見える。
ああーやっぱ可愛いなーいつまで経っても子供みたいだなーあーやべえ可愛い。
「マオさん、何してるんですか?」
「ちょっと、買い物に…」
「へ〜…」
ちらっとショーウィンドウを覗くとそこはアイスの専門店だった、マオは無類のアイス好きで騎士団でも有名だ。ちょっと怒っていてもアイスを渡せばすぐ笑顔になるぐらいだ。
「さっきから悩んでいるようですが、どうかしましたか?」
「いや、あの、別に…」
「どれが欲しいんですか?」
「新製品って書いてある、あのピンクの…」
「? あれはジェラートですよ?」
「そうなんです、ここのお店、ジェラートも取り扱い始めたみたいで、本当はいつものかぽってするアイスが好きなんですがジェラートも挑戦したいなって…でもジェラートって高いんですね、びっくりです」
「いろんな味があるようですが、さくらんぼでいいんですか?」
「はい、本当はぶどうか抹茶で悩んで…あ、この抹茶シーナから輸入してるから美味しいですよ、きっと。苦味も少なくて 」
「じゃあ抹茶にします?」
「いえ、さくらんぼにします、じゃ、じゃあいってきます」
緊張した顔で店内に入ろうとするマオの袖を引っ張り引き寄せる。
「い、意地悪しないでください!」
「ここで待っててください」
「?」
イノクは女の子でいっぱいの店内に入り注文をして、ジェラートをもって出てきた。
「頑張っているようですから、僕からのご褒美です」
「イノクさぁん!!」
「はいはい落ち着いて、向こうにベンチがあるのであそこで食べましょうか?」
「はいっ!」
イノクにはマオが犬に見えた。
「美味しいですか?」
「んふぅ、おいひぃれふぅぅ」
ほっぺをツルテカさせてジェラートを頬張る、アイスを美味しそうに食べる大会があったらきっと優勝するだろう。
「でも、いいんですか?高いのに」
「いいですよ、あなたの笑顔が見られるのなら、安いものです」
「イノクさん…」
少し自分よりも年上のこの人のことがかっこよく見えた。
「マオさん、ここ、ついてますよ」
「へ?」
「ここです」
ぺろん、と頬っぺについたジェラートを舐めとった。
「ほら、取れました、ってどうしました」
「さ、最初からそういうつもりだったんですね!?不潔です!!」
半泣きになりながら逃げるマオを追いかけることもできずイノクは取り残されたのであった。


