「おにいさん、こんなせかい、つぶれてしまえばいいとおもう」
泥と埃でドロドロに汚れ、両手足を枷で拘束された少女が何もかもを諦めた顔で微笑んだ。
となりにいる、同じぐらいの年の同じ顔をした少年も、言った。
「離れ離れになってしまうその前に約束しよう?」
少年は、枷のついた手で少女の手を取った。
「いつかきっと、二人でこの世界を...」

『その願い、叶えてあげようか』

目がくらむほどの眩い光と共に声が聞こえた。男とも女とも取れないような中性的で、綺麗な声。次に姿が見えてきた。魚のような下半身をしており、背中からは翼が生え、竪琴を持っている。

『我が名はセイレーン歌声と 大海をつかさどる乙女』

セイレーンは二人に歩み寄ると静かにいった。

『力が欲しくないか』

「力…」

『私がお前たちの願いを叶えてやろう』

二人は顔を見合わせて、声を揃えた。

「お願い、願いを叶えて」

その言葉にセイレーンは満足そうに頷くと、二人の頭に手をかざした。

『次にお前たちが出会うとき、きっと願いは叶うだろう』

セイレーンは光の中に消えていった



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