御曹司の秘書さんのため息◆


着席したところで、メニューが差し出される。

「…始さん。苦手なものはございますか?」

「---あぁ、というか 別に 市川 武は、
 僕の秘書でもなければ、接待相手でもないだろう?
 
 お互い 好きなのを頼んでいいんじゃないか?
 そんなに気を使うな。」

「…いえ。そういうわけには・・・」

だって、これは業務の一環で、俺はまだ残業手当をもらいながらここにいる。
気の一つや二つ、使わせていただけないと・・・

「---ふ。ここに 僕と向かい合わせで食事をとる。
 ということ自体が 気を使っているから、
 別に、大丈夫だ。」


「・・はぁ。」

また、顔に出てたのか。


「だから、顔に出てるよ。」

「・・・・。」

この人の洞察力には、本当にかなわないし、
むしろ なにかしらの能力とかあるんじゃないだろうか。

なんて思いながら、思わず苦笑する。



結局、お互い好きな物を適当に頼む。



「とりあえず、乾杯。」

にこやかに、始さんはワイングラスを軽く持ち上げる。
俺も、つられてグラスを持ち上げる。

注がれた赤でもなく、白でもないロゼワインっていうのが
また始さんらしくて思わず笑ってしまった。