着席したところで、メニューが差し出される。
「…始さん。苦手なものはございますか?」
「---あぁ、というか 別に 市川 武は、
僕の秘書でもなければ、接待相手でもないだろう?
お互い 好きなのを頼んでいいんじゃないか?
そんなに気を使うな。」
「…いえ。そういうわけには・・・」
だって、これは業務の一環で、俺はまだ残業手当をもらいながらここにいる。
気の一つや二つ、使わせていただけないと・・・
「---ふ。ここに 僕と向かい合わせで食事をとる。
ということ自体が 気を使っているから、
別に、大丈夫だ。」
「・・はぁ。」
また、顔に出てたのか。
「だから、顔に出てるよ。」
「・・・・。」
この人の洞察力には、本当にかなわないし、
むしろ なにかしらの能力とかあるんじゃないだろうか。
なんて思いながら、思わず苦笑する。
結局、お互い好きな物を適当に頼む。
「とりあえず、乾杯。」
にこやかに、始さんはワイングラスを軽く持ち上げる。
俺も、つられてグラスを持ち上げる。
注がれた赤でもなく、白でもないロゼワインっていうのが
また始さんらしくて思わず笑ってしまった。

