好きなんて言えないよ。

あたしがボーッとつっ立ってると、紺野君があたしに気付いたのか友達に向かって




「こおーらっ!お前のせいで逢瀬さん通れないでしょ!?」




そう言った。



そして、あたしの方を向いて




「ごめんねーっ、逢瀬さん」




そう言って笑った。




あたしはそんな笑顔を見て




「あっ、いいよ」




それしか言えなくなってしまって席へと着いた。




“逢瀬さん”




あたしの名前知ってたんだ。




彼の後ろ姿を見ながらそんなことを思う。