「お世話になりました、実風姐さん」 畳みにぴったりと額をつけ、完璧で、乱れのない最上級の礼を示すと、譲は差し入れに買ってきていた実風の好物の甘味を差し出す。 だが、実風は現れた甘味に目を輝かせて食いつくどころか、まじまじと譲に視線を注いでいた。 その視線を痛いほど受けていた譲は、顔を上げるのが気まずかった。 「どういうことだい、譲ちゃん。説明……してくれるね」 「はい」 譲は面をあげて、はっきりとした声で通るように返事した。