(不気味な空の色だな……)






夜明け前のせいか、雲や空は淡い紫色の朝焼けに染まっていた。








そんな風にただ淡々と江戸を歩いていた総司だったが、ふとあるところで顔をしかめた。









足を止め、辺りの気配を感じ取る。








敵意はなく、自分をつけている様子ではなかったが、総司は一応念のために、物陰に身を潜める。








間もなくして、総司がもといた場所には若い女がやってきた。








呼吸が荒く、様子からして誰かに追われているようだった。







女は少し休むそうに、漆喰塀に背中を預ける。







女は気付いてないようだが、総司には分かっていた。







気配をしのばせて女を追う足音が。







ざっと男四人。






だが総司はしばらくは様子を見ることにする。今すぐ事を起こすのはよくない。









やがて、総司が察した通りの人数の野蛮そうな武士が、路地から姿を現した。








女がぎょっとし身を翻して逃げようとすると、いとも簡単に男たちに取り囲まれる。






「なあ、姉ちゃん。俺たちとすこーし、遊んでくれればいいんだぜ?金は払うじゃねえか」







「そんな……あたしには恋人がいるんです!そんな…遊びだなんて…ふざけないでください」






(なるほどね……)





そういうことか、と女が置かれている状況を総司は何となく理解する。





こういうことには疎くてよく分からないが、つまりは……。






(無理矢理誘われてる?)





あ。やっぱよくわかんないや。でも、よろしくない状況であることには間違いない。