幕末の神様〜桜まといし龍の姫〜





原田に全て食事を運んでもらった譲は、さっさと片づけを済ませようと、皆が食事の部屋に集まるまでの間、料理で使った食器を洗おうと井戸へ向かっていた。





食器をせっせと井戸の傍まで運んでいくと、桜の木に目をとめた。








既に桜の花は散り、青々しい葉桜を身に纏っていた。






そんな季節の変わり目を感じさせる桜の木を見ながら、譲はしゃがみこむと作業を始めた。






春も終わりかけのためか、最近はやたらと蒸し暑く、冷たい水が手に心地よかった。





洗って、陽の光を反射するくらいにぴかぴかになった食器をたらいに乗せ、立ち上がると、厨まで運ぶ。




ふうと一息をつくと、ひょっこりと姿を現した者がいた。




小柄で華奢なその人物は「よお」とでも言うように片手を挙げる。




「おはよ、譲。まだこんなところにいたのか」




「ああ、おはよう平助。さっきまで皿洗いしてたの」





藤堂平助。





北辰一刀流の免許皆伝をもつこれまた実力者。




二年ほど前にふらりとやってきて、永倉に無理矢理接待させられて、どういうわけか試合をして、けど、当時の永倉に敗北を喫した。




以来、あてもなかったという藤堂はこの試衛館に顔を出すようになり、今ではすっかり住み込み状態になっている。





だが、永倉や原田と決定的に違うのは、きちんと入門料と月謝を払っているという真面目な青年だった。