「でもお酒を呑んできたのは事実でしょ?」
「まあ、それはそうだが……」
まだ時間に遅れたことを申し訳なく思っているのか、原田は気まずそうに頷く。
それを聞くと譲は戸棚から壷を持ってきて蓋を開けた。
壷から匂ってきた香りを嗅いで、原田が首を傾げる。
「これは……味噌か?」
すでに鍋に壷のものをを溶かしていた譲は、振り返りざまに応える。
「ええ、そうよ。酔い覚ましにはちょうどいいかと思って味噌汁を」
「そいつはありがてえな」
礼を言う原田に譲はちょこんと頭を下げる。
「どういたしまして」
結局、今朝の朝食は全て譲が作った。
原田は、譲の代わりにせめてもの詫びと礼だと言って、朝食の膳を全て運んでくれた。

