左之さんは、五年ほど前にこの試衛館にやってきた。




いや、精密かつ具体的に言えば、行き倒れていたところを、総司と買出し中に自分が発見したのだ。




非情な総司はほっていこうと残酷なことを冗談交じりで飄々と口にしたが、譲はそんなわけにはいかず、結局、試衛館に連れ帰り、三食を与え、様子を見た。




すると、経過は順調で、体調が万全になると、左之さんは私や近藤さん、土方さんに向かって土下座をして潔く頭を下げ、一宿一飯の恩義に礼を言い、そして、ここに置いてくれと頼んだ。







人のいい近藤さんはすぐさま受け入れた。







土方さんも山南さんも困った顔で、近藤さんに呆れかえっていたが。






左之さんは非常に男気に溢れ、かつとても優しい人だった。






加えて剣術の腕も相当なものだった。





具体的に言えば剣術ではなくて、種田流槍術の免許皆伝を持つ、槍の使い手だった。





きっと、左之さんに槍を持たせれば勝てる者はごく一部に限られてくるだろう。