幕末の神様〜桜まといし龍の姫〜




「てめぇは死ぬつもりか」




早速、近藤さんの部屋に連れられた譲は土方、近藤、山南さんたちと正座で向き合っていた。




他の隊士は立ち入りを禁じられていたが、様子が気になるのか、人の気配が廊下に感じられる。



だが譲は黙りこくったまま、沈黙を貫いていた。



「私闘は厳禁と、局中法度で決まってる。お前がそれを知らなかったはずがねぇ。譲、お前は自分が死ぬつもりで芹沢さんのとこに行こうとしたんだな」



土方さんの見解に、譲は何も言わないまま、ただこくりと頷く。


押し黙ったままの譲に山南さんがため息をつきながら眼鏡を指で押し上げる。



「まあ、あなたの気持ちも理解できないわけではありません。しかし、軽率な行動は隊の風紀を乱します。ましてや、監察方のあなたがそれでは困るのです」




「譲。皆、お前を思って言ってるんだ。何か言ってくれ」



痺れを切らした近藤さんの声に、譲は声を押し出した。



「なんで……」



声が震える。うまく息が吸えなくて、胸が痛かった。


手に込める力が強くなる。




「なんでそんなに冷静にいられるんですか⁉︎お梅さんは、女として一番耐え難い侮辱を受けたんです!それを……それを黙っていろというのですか⁉︎そんなの……そんなのおかしいです!」



勢いをつけると、譲は自分でも感情の整理ができなかった。




「道徳的問題を起こしたのは芹沢さんです!なのになぜ、あの人には何も言わず、飄々とさせるのですか!私は許せないんです。絶対に力では敵わないと分かっているのに、その力まかせに自分の欲を満たす人が!」




譲の脳裏に焼きついて離れない、譲の村が幕府から受けた残虐。


戦う意思のない村人をただ殺し、滅ぼした幕府軍の顔。




試衛館の時にあったあの事件。
女を弱いと決めつけ、約束を反故にした男の傲慢な顔。



吉原や島原で見た女の物のように見たり、扱う男たちの卑しさ。



その全てが、怒涛のように溢れてくる。




譲は立ち上がると、部屋を飛び出した。


廊下には総司や左之さんに斎藤くんや平助、新八さんに源さんもいたが、彼らの間をくぐり抜けて譲は走っていった。



近藤さんたちの自分の名を呼ぶ声は遠く、聞こえなかった。