幕末の神様〜桜まといし龍の姫〜



もう気付くと昼下がりになっていた。


譲は稽古で流した汗を拭き、汗のしみた衣を着替える。



新しい衣に身を包み、廊下を歩いて、稽古場を通り過ぎようとする時だった。


片付けをしていたのであろう隊士たちの会話が聞こえてきた。



「あー、あのよく前川邸に取り立てに来てた人だろ?可哀想にな。芹沢局長の手篭めにされちまうなんて……」



その言葉を聞き逃すはずがなく、譲は血相を変えて、稽古場に入る。



鬼のような形相の譲の登場に隊士たちが怯えた様子を見せる中、譲は胸ぐらを掴む勢いで尋ねた。


「それ、どういうこと⁉︎ 芹沢さんがお梅さんを手篭めにしたって!本当のことなの⁉︎」


「え……えっと……」


他の隊士が見兼ねて慌てて口添えする。



「はい、そう噂になってます……。なんでも監察が……」





話を最後まで耳にすることなく、譲は道場を飛び出した。




身体中の血が騒ぎ、手は自然に刀にかかっていた。