幕末の神様〜桜まといし龍の姫〜







屯所に帰る道中、譲は口を開けた。






「ねぇ、誰に買ったの?」




すると平助は立ち止まり、とある方向を指差した。






その方向を辿って視線を向けるため、平助から顔を背けた時だった。





髪に何かが挿さる感覚がして、指を伸ばしてみると、そこには簪が挿さっていた。




すっと抜いてみると、それは間違いなく、先ほど女将が勧めてきた硝子細工の桜の簪だった。





説明を求めるように平助をみると、平助は嬉しそうにはにかみながら言った。





「いや……、なんつうか。お前には苦労をかけてばかりじゃん?お前、ずっと男の身なりして、遊郭では嫌な酔っ払い相手に女の格好してさ……。お前が別に何とも思ってなくても、その……悪いなって。せめての罪滅ぼしだよ。受け取ってくれ」






気恥ずかしいのか、それからの平助の歩調が速くなった気がした。




譲の胸に暖かい風が吹く。




(これでいい)




自分のしていることをちゃんと認めてくれる人がいる。自分を受け入れてくれる場所がある。




この簪だけでも、自分には勿体無いぐらいだ。





「ありがとう」





その小さな感謝の言葉は、たぶん彼の耳に届いたのだろう。







平助は笑みを深め、にっこりと微笑みを返してくれたのだった。