幕末の神様〜桜まといし龍の姫〜





そんな和やかな光景を見ていた人影がもう一人。






その人物は頬が赤いのを隠すかのように自分の手で顔を覆った。







咄嗟に物陰に姿を隠してしまったその人影は、総司だった。







(何やってんだか……)







堂々と出たらいいものを、自分はまるで譲の反応を窺うかのように潜んでいる。






つくづく、自分はずるい人間だと総司は思う。







だが、勇坊の言葉をあえて否定しない譲を見ていると、不思議な動悸が始まり、頬が熱くなったのだ。








総司は譲が去ったあと、深呼吸をして先ほど譲と勇坊がいた庭に出る。








彼女の後を目を細くして見つめる。






不覚にもどきどきしてしまった自分を戒める。







自分は譲にとって、きっとただの仲間でしかない。そう何度も言い聞かせているのに、自分の感情は案外聞き分けが悪いようだ。






総司は彼女を振り切るかのように、譲とは反対に歩き始めた。