そう思うと、総司の爪先は方向を変えていた。 「総司?」 心配そうに呼び止める近藤をよそに、自分の耳を頼りに総司は音の根源を辿った。 歩みを進めるほどに、音がだんだん大きくなる。 その度に、音色が胸に重く響いてくる。 きょろきょろと頭を動かしていると、ある木に目を惹かれた。 この道場の庭で一番大きな木。 そこに向かって一直線に走っていく。 そして、ある角を曲がったところで、自然と総司の足が止まった……。