幕末の神様〜桜まといし龍の姫〜











「じゃあ、気をつけろよ。くれぐれも……」








鋭い目で土方に釘を刺されて、譲は何度目かのため息をつく。







「分かってますよ。誰にも私が島原で働いてるなんて言いませんよ。というより、言いたくないです」








「勘違いするなよ。これは浪士組の資金が足りなくて、お前を出稼ぎだしてるのではなくて……」








「島原で悪事を働く不逞浪士や、羽を伸ばしているうちの隊士を取り締まるためですよね。分かってますよ」







土方の言葉を予測して、さらさらと言葉を重ねる譲。







最初は島原に行くことを反対していた近藤と土方だが、浪士組の現状や、譲の意思、それに以外にも山南の説得もあって、「島原の風紀を監察する」という名目のもと、譲が働くことを許可してくれた。








ただ、江戸にいた時と違うのが、今回は全員にはその事実を知らされないということだ。







このことは、幹部は勿論、一般隊士にもばれないようにしなければならない。







それでは、監察をしている意味がないし、女を働かせているとか何とかで、近藤や土方さんの迷惑になりかねない。






これは、近藤さんと土方さんと、山南さんだけが知っている。それ以外の者には、迂闊に気を緩めてはいけない。





充分に用心しなければ。








譲は夕暮れのなか、荷物が入った風呂敷を握りしめる。









「行ってきます」








譲はそう言って八木邸を後にした。