幕末の神様〜桜まといし龍の姫〜






二人の様子を見届けた後、譲は何となく総司の部屋の前まで来ていた。





なぜここへ来たのか自分の心理が自分で分からない。







隙間風のように物寂しく心に吹いている孤独を癒してくれる者を体が本能的に理解していたのか。それとも……。






後者の考えに譲は首を振り、やはり引き返そうかと踵を返しかけたその時…。






がらっと障子が開き、振り返るとそこには総司がいた。





総司もこちらを見て、驚きに目を丸くさせている。






「譲……?」






総司が掠れた声で名を呼ぶ。





譲は今にも泣き崩れそうな顔で、総司を見上げる。







「総司……」







一体、自分はどうしたのだろう。こんな、か弱い、女のように女々しい姿を見せて……。






(らしくないな……)





譲は袖口で顔を覆い隠すと、逃げるように去ろうとしたが、腕を掴まれ、ぐいっと引き寄せられる。






「どうしたの……?」






温かい総司の体温を衣越しに感じながら、ぐぐもった声が耳に心地よい。





譲は総司の問いに答えることなく、その温もりに縋るようにぎゅっと総司の肩口に顔をうずめる。





びくっと、総司の体が震えた。