度肝を抜かれるとは、まさにこのことなのだろう。
譲は一瞬、自分の耳がおかしくなったのかと思った。
焦って、嫌な冷や汗を掻きながら、今一度自分の服装を見直す。
長い髪は短髪風に仕上げているし、何より自分は袴を履いている。女だと分かる要素は全て隠しているつもりだ。なのになぜ、あぐりは初見で女だと見抜いたのだろう。
唖然として言葉を失っていると、あぐりが気まずそうに小声で尋ねる。
「あ……もしかして……、いっちゃいけまへんでしたか?」
あぐりの声に、譲はふるふると頭を振って辛うじて返事を見せる。
「い……いや、大丈夫」
ほっと胸を撫で下ろすようにあぐりが小さく息をつく。
「それはよろしゅうございました。ふふ、女の勘ってやつやね」
「女の勘……」
譲はこの時初めて、自身が女でありながらも、『女の勘』が空恐ろしいことを思い知らされた。

