朝の報告の後のこと。
土方と近藤は、芹沢の部屋を訪れていた。
二人は、いかにも不機嫌そうに顔をしかめている芹沢に、ある巻物をふたつ差し出す。
それを受け取ったのは、芹沢の側近でもある新見錦という人物だった。
常に芹沢さんの後ろをついてまわる、土方たちにしたら芹沢の犬のような存在だった。
その新見は、巻物の紐を解き、するすると広げていく。
そこに綴られていた内容を見て、新見が驚きに目を見開いた。
「これは……!!」
一つ目の巻物には、壬生浪士組の隊の編成についてまとめられていた。
「これからは京の都の巡察を始めるからな」
【局長……近藤・芹沢・新見
副長……土方・山南
組長……沖田・永倉・斎藤・松原・尾形・武田・井上・谷・藤堂・三木・原田】
と達筆な字でまとめられていた。
そして、重要な役職がもう一つ。
【監察方……龍神】
「監察というのは……」
新見が問うと、土方はやや厳しい面持ちになる。
「敵地への潜入捜査、および隊内の風紀を整えてもらう」
どん、と新見が畳を叩く。
「壬生浪士組を見張らせるということですか!!」
「そうだ。この役職はもっとも信頼があり、かつ腕のたつ奴にしか任せられねえ。敵地へも潜り込んでもらうことがあるからな。だから、今はまだ一人だが、今後、新しく募集する隊士次第で増やす検討はしている」
「……!!」
見張られることが気に食わないのか、新見は悔しそうに歯軋りをしていたが、やがてもう一つの巻物も手に取り、とうとう怒りをあらわにする。
土方の想定内の反応だった。
「それは局中法度だ。ここに集まるのは無法者ばかり。こういうきつい規律で縛らねえと、隊はまとまらねえ」
【一 士道に背くまじき事
一 局を脱するを許さず
一 勝手に金策致すことを許さず
一 勝手に訴訟を取り扱うことを許さず
一 私闘を許さず
右の条文に背く者には切腹を申し付ける】
「かなり苛烈な隊規だが………」
土方はぎろりと、芹沢さんをねめつける。
「あんたが……反対する理由はねえよな?」
そうしてにらみ合う二人。
緊張の糸が張っていたが、やがて芹沢がふんと鼻で笑う。
「よかろう。好きにしろ」
余裕に満ち溢れる言い方に、土方は少々面食らったが、それでも厳しい、強気な表情は変えない。
「わかった」
土方と近藤は部屋を後にした。

