「うわあー、今日の朝飯の魚鮎じゃん!」
広間に並べられた膳を見て開口一番に平助が感動の声を上げる。
その後ろからはずらずらと左乃さん、総司、源さん、山南さん、近藤さんと続々と入ってくる。
そこで譲に疑問がよぎる。
(あれ……?新八さんは?)
いつもは我先にと真っ先に広間に集う人が、今日は遅れていた。
平助にそのことを問う。
「ああ、新八さんなら昨日の晩に酔いつぶれちまってよ。まだ寝てるぜ」
「えっ!?放置してきたの?」
「いいじゃん。これで久しぶりにおだやかに飯が食えるぜ」
平助の言葉に、まあそれもそうかと納得した譲は上座に目を向ける。
土方さんの姿もなかった。
すると譲の視線に気がついたのか、山南さんがにっこりと微笑む。
「土方くんなら、探し物があるので、先に食べてもいいと言伝を預かっております」
「あ、そうですか」
返事の裏側、譲はにやりとなる。
土方さんの探し物といえば、たぶん【豊玉発句集】だろう。そりゃ、あんな句集誰にも見られたくないだろうな。
そんな何か企んだような譲の顔を見て、総司が声を掛けてくる。
「どうしたの譲。何だか悪い顔になってるよ」
総司の声に、譲はさらにいい事を思いつく。
思わず総司のもとまで歩み寄って耳打ちする。
「あとで、私の部屋まで来て」
総司が不思議そうにするものだから、譲はさらに付け加える。
「土方さん絡みの面白いものがあるの」
そう言うと、総司は「ああ」と笑って、完全に策士の顔つきになる。
試衛館時代、幾度二人で土方さんをいじってきたか。
それは京でも変えるつもりはない。

