幕末の神様〜桜まといし龍の姫〜








(近藤さんたちは戻っているのかな………)









気になった譲は立ち上がると、部屋を出た。








寝巻き姿で、しかも髪を下ろしてるため、また辺りを窺(うかが)いながら近藤の部屋に向かおうとしたが、ちょうど近くに土方の部屋があった。








(ま、土方さんでも同じか)










そう単純に思った譲は土方の部屋の障子から、行灯の明かりがうかがえないことに首を傾げ、声も掛けることなく障子を開けた。








思った通り、土方はいなかった。







「まだ戻ってきてないのかな………」







何してるんだろうとぼやきながら、譲はふと、土方の書斎に目を落とす。







書斎の上に置かれていたのは一冊の本だった。







興味本意で、譲はその書物を手に取る。








本には、【豊玉発句集】と達筆に書かれていた。









パラパラと頁をめくっていって、譲は眉をひそめた。









「これ………句集だ」






さらさらと読み進めていくうちに、譲は脇腹を押さえる。







笑いが………堪えられない!!土方さんにこんな趣味があったなんて!









(『春の草 五色までは 覚えけり』って、すくな!土方さんって意外と頭悪いんだな……)







と的確で鋭く突っ込む譲。それからも読み進む手を止められなかった。







(『梅の花一輪咲てもうめはうめ』………一輪咲いても二輪咲いても、梅は梅でしょ…?)







てか、こんな当たり前のことを書いてどうだというのだ。






(『朝茶呑てそちこちすれば霞(かすみ)けり』………お茶飲んでたら、霞(かす)んできたって、意味分からない)








ついには口を押さえていた拳からも笑いが漏れてしまう。







このままここで笑っているのもいけないと思った譲は、句集を自室に持って帰ることにした。








これは土方さんを弄るいい材料になりそうだと、わくわくしながら。