幕末の神様〜桜まといし龍の姫〜




















ようやく、芹沢が呑んでいる部屋にたどり着いた近藤、土方、山南の三人は、芹沢と向かい合っていた。








芹沢は三人の姿を見るといささか気分を損ねたようで、それを晴らすかのように煙管を吸う。







しばし無言の時が続いたが、芹沢は煙管を肘掛に叩きつけると沈黙を破った。









「で、一体三人揃ってわしに何のようだ」







酔っているのか、酒のせいで芹沢の口調はやや厳しかった。目元も赤くなっている。







だがなんら怯むことなく、近藤は口を開けた。






「我らは、ここに残って、民の安寧――ひいてはお上のために尽くす所存でございます。そして、ここに残っている者たちは強者(つわもの)揃い。お役に立てるかと」








「ふむ……」







芹沢は何やら考え込む。








「あの女もか」








はい、と身を乗り出して答えたのは山南だった。







「彼女は我らの試衛館のなかでも指折りの剣客。我らとて、本気の彼女に敗北を喫するほどです。無論、日頃は男装をしており、女だと分からぬようにしてあります」






ふん、と芹沢は満足そうに笑う。






「なるほどな。まあ確かに、普通の者ならば、やつが女だとそうそうに見抜けまい」






芹沢がそれまで自らを扇ぐために開いていた鉄扇をぱちっと音をたてて閉じる。








「ここで生きていくためには……おぬしたちの力を行使せよ………ということか」







小声でそう確かめるような呟きの後、芹沢の視線が先ほどから口を閉ざしている土方に向けられる。







それから近藤を見る。







「よかろう。京都守護職であられる会津公に面識がないわけではない。掛け合ってみよう」







「すまねえな。よろしく頼む」







黙り込んでいた土方が頭を下げたことに少々驚きながらも、芹沢はその色を見せることなく、続けた。









「ふん。まあ、どうなるかは先方次第だがな」