「ふぅ……」

ベランダに来て外を眺める春樹。

「どうしたの?」
「え?あぁ、もう終わるんだなーと思って」

春樹は明日の試合で現役を引退する。

「今までバスケしか見て来なかったから変な気分」
「だよね。どうだった?プロの世界」
「んー、なんだかんだ難しかったなー」

春樹はそのままコーヒーに口をつける。

「夢は叶えられましたかー?」

エアマイクで春樹に向ける。

「アナウンサーのつもりですかー?全然マイク届いてないですよー?」
「うっさい」

春樹をバシッと叩く。

「まぁ、完璧に叶えられた訳じゃないけどバスケ楽しいって思ってくれたり、俺みたいになりたいって言ってくれたからよかったかな」

幸せそうに笑う春樹。

「どう?バスケが習慣から無くなるのは?」
「違和感しかないだろうな。けどきっと毎日庭でボール触るだろうし、まぁ大丈夫だろ?」

どうだろ、毎日騒がれたら殴らないと……

「今後はどういう活動をしてくんですか?」
「主にタレント。バスケのコーチもやってみたいけどな?」

なんかさ、そんなに幸せそうに喋られたらこっちもバスケやりたくなるね……

「明日見に行ってあげるー」
「そりゃどうも。……あれ?仕事じゃなかった?」
「スケジュール換えて貰ったんだ」
「あー、わりぃな。マネージャー怒ってるぞ?」
「まさかまさかー」

そんなことを喋っているとバスケットボールが私の元に転がって来た。

「……やりたいな……」

思わず声に出てしまった。

「やるか?いいぞ?」

春樹は凄く嬉しそう。

「うん、やろ?」

それから私達は庭にあるバスケットコートに向かった。

「春樹からバスケ取ると何もいいとこないよね?」
「それずっと言ってんな」
「だって本当のことじゃん!!」
「そうだけど」

“バスケ王子”

かつてそう呼ばれていた彼の外見は今でも変わらない。

ただ、パパになって顔つきが柔らかくなったこと。

ルックスの完璧さは変わってない。

だからきっと私達の夢の中で出てきてくれるんだ。

学生時代の私達が……王子とマネージャーが。

そこから始まった恋はみんな成功している。

私も、咲羅も、夏恋も。

バスケ王子はあなたのすぐ隣にいるかも!?

あなたもよくバスケをやっている人を探してみるといいかも!!

バスケ王子、バスケしている彼に恋してみない?