[完]バスケ王子に恋をして。

どんどん上がっていく床の上で私は思っていた。

曲が終わってから目を開けよう……。

きっとお客さんを見ると歌ったっている最中に泣いてしまうから……。

私は強く目を瞑りマイクスタンドとマイクを持った。

「キャー!!」

悲鳴に近い声が私の耳に入ってくる。

そして上がっていた床が止まった。

……私はもうステージ上にいるんだ……。

~~♪~~♪

そして歌い出しに入る。

「~~♪~~♪」

私が歌い始めると益々大きくなる歓声。

この曲はデビュー曲。

この曲がきっかけで私はNANAになった。

私の名前が一躍有名となってたくさんファンも増えた。

この曲にはたくさんの思いが詰まっている。

どうか……この気持ちが私の声を通じてみんなに伝わりますように……。

サビに入ると「NANA」という言葉があちこちから聞こえる。

その声で私は目を瞑っていても思わず泣きそうになる。

みんな……優し過ぎだよ……。

きっと私の声は震えているだろう……。

泣きそうで……泣きそうで……でもまだトークは先だから……泣きたくない。

やっと一曲が終わった。
みんなからは拍手が贈られた。

「ふぅ……」

私は深く深呼吸をして次の曲へと向かった。

その後私はシングルからアルバム、カバー曲などを歌い続けて約1時間が過ぎた。

私はただ移動する訳でもなくマイクスタンドのところで歌っているのに熱気は冷めることを知らない。

ただそれ以上に盛り上がっていた。

一曲を歌い上げることで拍手が沸き立つ。

私は多くの人に支えられている。

咲羅の言葉は私の胸に強く突き刺さっている。

次はトークタイム。

私はゆっくりと後ろを振り返りステージ下へと向かう。

それからマントの下を咲羅がデザインしてくれたピンクの上品なミニワンピースに着替える。

小物やなんかも全て替える。

髪とメイクは崩れていない為何もしなかったけどアクセサリーも何も仮面以外全部咲羅がデザインしてくれた物に取り替えた。

高いヒールにピアス。

さっきのゴスロリワンピースとは雰囲気を全然変えていた。

準備が終わると後1分でまたステージに上がると言われた。

私が着替えている間、司会の人は話を繋いでくれていてお客さんからも笑いが起こっていたりした。

私は咲羅の服をギュッと握り締めて

「いってくるね」

そういって咲羅を思った。

「では、NANAさんに登場して頂きましょう!!どーぞ!!」

司会がそういうとまた再び起こる歓声。

それと同時に上がっていく床。

私はいままで一度もトークをしたことがない。

だけど咲羅の言葉を信じて私は瞑っていた目を開いて下を見た。

そして止まった床。

私はドキドキとうるさい心臓を気にしながら前を向いて仮面越しにお客さんを見た。

「っ……!!」

私はその光景に絶句した。