「どうして会いたいの?」
「……今日……春樹の誕生日……」

っ……!!

覚えててくれたんだ……。

「春樹……待ってる……ずっと……約束したから……」

俺は涙が出るかと思った……。

こんなに奈未の中に俺がいたなんて……。

「奈未」
「いや!!」
「奈未!!」
「いやぁ!!」
「おい、奈未!!」
「いやぁ……!!行くの!!」
「奈未俺の話聞けって!!」

奈未の肩を持って奈未に顔を見せる。

「……なんで……?」

奈未は顔を歪めた。

「いや!!幻なんか見たくない!!」

俺の腕を追い払おうとして暴れる。

「奈未もう大丈夫だから……」

奈未の体を包み込むと奈未の動きがピタッと止まった。

「……春樹……?」
「そ、俺」

奈未は静かに俺の背中に手を回した。

「本当に春樹なの……?」
「そ……だから病室戻ろ?」
「……うん……」

そう呟いた奈未を抱き上げて看護師さんに繋がれた点滴を持ってきてもらった。



「すいません……なんか……」
「いえ、大丈夫ですよ。あの段階で来ていただかないと私達もどうすればいいのかわかりませんでしたから」

そういって微笑むと看護師さんは病室を出て行った。

奈未は俺の存在なんてわかってないくらい黙って外を眺めている。

「奈未」
「……」

話し掛けても反応しないし……。

一体俺が来なかった間に何があったんだ?

「春樹」

俺が好きな声が部屋いっぱいに広がる。

「ん?」

奈未は俺のほうをしっかりと見て……

「ごめん……」

静かに涙を流した。