「……春樹くん?……どうしたの?」

キョトンとして俺を見る奈未。……と目を泳がしている……羽切。

「……」

きっと俺は羽切を思いっきり睨んでいるだろう……。

「春樹くん……?」

そんな俺を不思議そうに見ている奈未。

……そうだ……奈未に俺の記憶はないんだ……。

「……ん?どうかした?」

普段通り笑顔で話しかえす俺。

「いや、いきなり入って来たからびっくりして……」
「そっか……お取り込み中ごめんね?」
「え?……な、何言って「羽切借りてもいい?」

焦っている奈未を遮って羽切を見る。

「え?別にいいですけど……」
「じゃ、借りてくね」

羽切の腕を思いっきり引っ張って病室から出た。



「おい!!どうゆうことだよ!!」

病室を出てから思いっきり羽切を壁に押して声をあげる。

「どうゆうって……奈未が俺に好きって言ってきたからだよ」
「……は?」
「奈未が俺に告白してきたんだよ。……それでわかった……奈未と俺は両思いなんだって……だからキスした」
「っ……でもそれは過去のことで「だろ?でも今の奈未は中2。その時の奈未の気持ちは俺にあったんだよ」

冷ややかに俺を下から睨む羽切。

「奈未に早く告白してればよかったな……それだったら今だって付き合ってたのに……お前に会ってても俺だけ見てた、そしたら奈未はこんな状態になることはなかった」
「……っ……」

ゆっくりと羽切から手を下ろす。

だって本当のことだから……。

俺がちゃんと不安にさせなかったら……俺が逃げていなかったら……こんな結果にならなかったのに……

「言っとくけど、俺奈未に振られてても好きだったから」

だと思った……。

羽切がそう簡単に諦める訳ないんだよ……。

なのに……俺は安心しすぎたんだ……。

「だから俺は奈未をもう一度振り向かせる。記憶が戻っても」

そう言い残して羽切は俺の横を通り過ぎて行った。

「……ハハッ……」

俺はその場に座り込む。

「バカみてー……」

俺何回羽切に負けてんだよ……。

奈未が羽切から離れたことなんてあったか?

俺達は離れてた期間が長かったのに何でそれを埋めようとしなかった?

何で……

「何でプロなんてなったんだろ……」

ただの……俺の欲じゃねーかよ……