<何でうちが奈未に会ったらダメなんだよ!!>

携帯の向こうで怒鳴っている咲羅。

「しかたないだろ……奈未は俺らの記憶がないんだ」
<だからって……何でうちだけ!!>
「咲羅の職業を考えてだよ」
<……っ……何でだよ!!それなら仕事全部断って奈未のとこにいくぞ!!>

そんなこと咲羅がしたら……

「俺だって出来るならそうしたい……だけど竜基さんが言ってたんだ。俺はまだ活躍出来る年だって」
<春樹はともかく……うちはまだ未熟で「そんなことないだろ?」
<……え?>
「たくさん仕事あるんだろ?モデルじゃなくてもデザイン考えたりしてんだから……咲羅だって今じゃ人気モデルだろ?」

テレビや雑誌には咲羅。

ビルの大きな広告には咲羅のブランド。

今最も注目されているタレントかもしれないのに……。

奈未に会ってなにも出来なくなったらどうする?

<だからいやなんだよ……芸能人って……何か遭ってもすぐに行けない……だから入りたくなかったのに……>

でも……咲羅がその道を選んだのは……

「自分が作ったもので幸せになって欲しいから……だろ?」

咲羅がデザインしたもので幸せになって欲しいから……だろ?

モデルとデザイナーになったのは。

<わかってんじゃん……わかった、奈未が記憶取り戻したらすぐ行くから。その間うちのこと忘れないように写真集でも見せとけよ?>
「あぁ、わかった……」

そういって咲羅との電話を切った。

「ふぅー……」

俺の記憶は奈未にはない……。

なら、いちから教えて……早く記憶を取り戻してもらおう。

俺はゆっくり奈未の病室の扉を開けた。

「……っ……」

俺はある物を見てその場で硬直した。