「奈未!!」

ーガシッ

遊園地を出てすぐの交差点で春樹に腕を捕まれた私。

「いや!!離して!!」

必死になって春樹の手をほどこうとするけど男の人の力には勝てない。

「なんで逃げるんだよ……泣いてるし」

春樹の白い手が私の顔に触れる。

「私……やっぱり……無理かも」
「……は?」

私の一言で春樹のでの動きが止まる。

「私……多分春樹のこと信用できてないよ……」
「……なんでそう思うんだよ……」

いつもより低い声に胸が締め付けられるように痛くなる。

「わかんないよ……だけど私……もう耐えきれないよ……」

私の視界がどんどん歪んでいく。

あぁ……私泣いてるんだ……。

……また私……春樹を不安にさせてる……。

「俺……奈未のお願いならなんでも聞く。だから……もし奈未が俺にバスケやめろって言ったらやめるよ?」
「え?」

何言ってるの……!?

春樹にとってバスケは職業であって、生き甲斐でしょ?

そんなのやめるなんて……。

「俺はそれくらいの覚悟で奈未と付き合ってんの。だから奈未が言いたい事あるなら言ってくれないと困るんだけど」

……やっぱりあなたはいつになっても優しいままなんだね……。

でも……こんなに優しい君に言える?

ただのヤキモチだって……。

言ったら私だけただのバカじゃない?

勝手に嫉妬して……春樹は私の事信じてるのに……そんなこと言える訳ない……。

「いや!!」

私はいつの間にか緩んでいた春樹の手を追い払って横断歩道に向かって走った。

「奈未!!」

やっぱり私はあなたに合わないよ……。

こんなわがままな私なんかよりいい人絶対見つけるから……。

だから……今は一人にして……?

私の足は止まらない。

だけど、私は春樹の声で止まればよかったのに……。

春樹の言う事守ってちゃんと話せば……

こんな結果にならなかったのに……。

「奈未!!危ない!!」
「え?」

ーキーッ!!

ドンッ!!

鈍い音が聞こえた。

……あれ?視界がぼやけるよ……?

「キャー!!」

うるさいような悲鳴。

「大丈夫か!?」

焦るような男の人の声。

「奈未!!」

そして私の好きな声が聞こえると同時に私の意識は途絶えた……。