「どこいくの?」

心配そうに体育館を見つめながら俺に聞く奈未。

「ん?秘密」

そういって外靴に履き替えた。

「え?外?」
「うん、ダメ?」
「ダメじゃないけど……」
「じゃ、行こうぜ?」

俺は奈未の手を引いてある場所へ向かった。


「うゎー……ここどこ?」

数時間してついたのは俺の一番好きな丘。

辺りはもう真っ暗で綺麗な夜景が下に広がっている。

「俺の好きな場所。綺麗だろ?」

目の前に広がる海と街を指差す。

「うん!!……ここどこ?」
「俺の誕生日毎年来てる田舎の小さな丘」
「え?田舎?さつき地下鉄で来たじゃん」

嘘だ!!と思っているであろう奈未お得意の顔。

「さっきの地下鉄じゃないし……地下行った記憶あるか?」
「あ……言われてみるとないかも……」

ケロッとした顔で俺を見る。

「かわい……」
「へ!?」

あ、ヤベッ……声出てた?

俺はギュッと奈未を後ろから抱きしめる。

「……春樹……?」
「ここに来ると落ち着くんだ……」
「うん……」

そのまま黙ってしばらく奈未を抱きしめる。

「何でここに来たかわかる?」
「……わかんない……」

だよな……。

俺が勝手に連れてきたんだし……。

「今日……俺誕生日……」
「……え!?」

奈未は慌てて俺から離れる。

「嘘……」
「マジ」
「ごめん……私なにも用意してない……」

目に涙を溜めてシュンとする。

「別にいいし……俺は奈未がいるなら何も要らない……」

そういって再び奈未を抱きしめる。

「でも……」

まだ不満があるみたいな奈未。

「じゃあ、約束して?」
「何を……?」
「俺の誕生日……9月3日は一緒にここに来るって」
「え……?」
「それ以外何も要らない……」
「わかった……」

そういった奈未を体から離してジッと見る。

「春樹」
「ん?」
「生まれてきてくれて……ありがとう……誕生日……おめでとう」

奈未はそっと俺に軽くキスをした。

「サンキュ……」

奈未の髪をクシャッと軽く撫でて奈未に深いキスをした。