[完]バスケ王子に恋をして。

ーダンッ……ダンッ……

ゴールの下で何か考えながらドリブルをする竜基さん。

きっとどうやって攻めようか考えているんだろう……。

すると竜基さんはいきなりドリブルするのをやめて黙って俺をジッと見ている。

……俺なんかしたか……?

そう思っていると急に竜基さんの口角が上がった。

「え……?」

次の瞬間俺は目を大きく見開いた。

ーシュッ……ダンッ……ダンッ……

それは一瞬の事で周りにいた部員も驚いているのかざわつき始めた。

「はい……次は春樹くんの番だよ?早くボール取ってきなよ?」

その顔はまさに不良がパシリに使う時のような憎たらしい顔……。

「……っっ……」

でも俺はそんな顔を憎たらしいとは思わなかった。

……だって竜基さんはその場から反対のゴールにボールを入れたんだから……。

……しかも助走も無しで……片手で投げた。

しかもその球は野球部なんじゃないかってくらい速い魔球でバスケットボールだとはとても思えない……。

やっぱりこの人……レベルの格が違う……。

そう見せつけられた瞬間だった……。


俺はゆっくりと振り返りボールを手に取ってゴールの下に向かった。

……次はどう攻めようか……。

俺はドリブルをしながら考える。

竜基さんは俺なんかよりも何千倍技術が高い……。

そんなの試合をする前からわかっていた……。

……これからは頭脳プレーしか出来ない。

……確か竜基さんは右からシュートを入れることが多いはず……。

なら、右から攻めて左から投げれば入るはず……。

そう思い足を出し作戦通り右に向かった。

それに気づいてこっちに寄ってくる竜基さん。

竜基さんが俺の真横に来た瞬間……

……いまだ……!!

そう思って左に足を踏み込んだ。

ースッ……

「え?」

思わず声に出てしまった。

ーシュッ……

綺麗に回転しているボールがスポッとゴールに収まる……。

そんな一瞬のことがスローモーションに見える……。

「6対3……」

静かに羽切の声が俺の耳に届く……。

すると竜基さんはクルッとこっちを向いて満面な笑みを向けてくる。

「サンキュー」

顔の横で可愛くピースする竜基さん。

……何だかその表情は奈未に似ている。

「え?」
「だって春樹くん俺の得意なボールくれたでしょ?」

その言葉でハッと気がつく。

……竜基さんは仕掛けられるボールが得意だった……。

だから今も俺が左に行くと同時にボールを取られたんだ……。

「しかも……それ素じゃないよね?」
「え……?」

素じゃない……?

どういう意味だ……?

確かこんなこと羽切も言ってた気がする……。

「俺は偽った春樹くんは見たくねーの……素じゃねーと……本当の春樹くんわかんないし……そんなバスケつまんないから」

そう言って竜基さんは俺の横を通り過ぎて言った。