[完]バスケ王子に恋をして。

「よ……」
「あぁ……」

俺はぼーっとしながらカビ臭い部室に帰ってきた。

そこには椅子に座って靴ひもを結んでいる羽切がいた。

「頑張れよ?」
「え?」

羽切はゆっくりと椅子から立ちドアに向かって歩いてきた。

その時俺の横でピタリと音が止まり羽切が俺の肩に手を置いている。

「竜基くんあぁ見えて奈未のことめっちゃ好きだから」
「……え?」
「昔は俺が奈未のこと好きって言ったらめっちゃ睨まれてならお前が奈未を命懸けても守れるんだろーな?って言われたし……だからお前が奈未の彼氏でいいかのか、奈未のこと守っていけるのかっていうのを確かめたいんだよ竜基くん」

……妹思いって言っていいのか……悪いのか……。

「でも……」

一旦口を止めてゆっくりと俺を見てくる。

「お前なら大丈夫だ……竜基くんもわかってくれるはずだ……だから……この勝負は素のお前で戦え」

そういって羽切は部室からスッと出て行った。

素のお前……?

素の俺って……どういうことだ……?

そんなことを思いっきりながらもタオルとスポーツドリンクを持って部室を後にした。



「来たか……」

体育館に行くといつも以上にシーンと静まり返っている。

きっと竜基さんが来たことで動揺してるのとこのことを誰か言ったんだろう……。

「今日は小島先生と2年生もいないんだな……どこ行ったんだ?」

壁に寄りかかったまま鋭い目で俺を見る竜基さん。

「小島先生は出張で先輩方は修学旅行に行ってます」
「へー……この時期って修学旅行だっけ?ま、いいや……おかげで勝負することが出来るんだから」

そう言ってサングラスをとりバサッと上のジャージを脱ぎ捨てて下のジャージをまくる竜基さん。

「やるぞ……早く準備しろ」

そういった彼の目は燃えていた。

やっぱりこの勝負に強い念を持っているのだろうか……。

なんてことをおもいながら部員の荷物が置いてある場所に手に持っている物を置く。

「春樹……」

心配そうに駆け寄ってきた奈未。

「どした?」
「……無理しないでね?」
「え……?」

そう言った奈未の目は揺らいでいて試合よりもこっちのほうが心配になる。

「お兄ちゃんの言ってることなんて無視していいから……私……春樹のそばにいるから……こんなことしなくていいんだよ……?」

俺の目をしっかり見て止めてと訴えてくる奈未。

だけど……

「ありがとな……でも俺竜基さんと戦いたいんだ」
「え……?」
「奈未の家族っていい人ばっかりだな……甘やかし過ぎだろ?」
「そ、そんなことないよ?」
「心配なんだろ……奈未が変な奴に捕まってないか……だからそれ証明してきてやるよ」
「……春樹……」
「だから……待ってろよ……」
「……うん」

奈未の答えを聞いた俺は奈未の頭に軽くポンと手を置いて竜基さんの待つコートに向かった。