「はよ」

翌日学校の体育館に行くと咲羅がいた。

「はよ……って大丈夫かよその足」
「まあな……ねんざって言われた」
「じゃ、1ヶ月くらいバスケ出来ねーな」
「は?何言ってんだよ、俺普通に今まで通りバスケやるけど?」
「……は?それ医者にオッケー貰った訳?」
「もらってないけど?」
「お前のバスケに対する愛は凄いな……」

咲羅は苦笑いしながら部室に入って行った。

「赤織!!」

それと同時に後ろから声が聞こえた。

振り返ると息を切らして汗だくの羽切がいた。

「おー……ってどうした?」
「はぁ……はぁ……助けてくれ!!俺じゃ無理だ!!」

……は?

「何?お前誰かに追われてんの?」
「は!?なわけねーだろーが!!」
「じゃあ何で俺に助け求めてるんだよ」
「……奈未が……」

その言葉で俺の体がピクリと反応する。

「……奈未が?」
「ヒステリックになってんだよ!!」
「……ヒステリック?」

ヒステリックって……あのパニックになった時になるやつか?

「マジで……車から降りて来ねーんだよ」
「車?」
「あぁ……とにかく!!今すぐ来てくれよ!!」

そう言って俺の手を取って走り出す羽切。

「おい!!俺ギブス巻いてんだけど!!」
「知るか!!とにかく俺じゃ無理なんだよ!!お前じゃないとあいつは無理なんだよ!!」
「あ″ーわかったけどマジで足痛いから!!止まれって!!」
「来るのが遅せーんだよ!!」
「こっちは怪我人だぞ!!もっと大事に扱え!!」
「知るか!!どっちにしろバスケやるつもりなんだろ?アップだと思って本気で走れ!!」
「だから無理だって!!」

そんなこんなで辿り着いたのは黒の高級車。

……は?

本当にこんなとこに奈未いるのかよ!!

奈未って金持ちだったか……?

「赤織様、お待ちしておりました」

しかも執事付きかよ!!

「中に奈未様がおります。どうぞ」

そういって華やかに開かれたドア。

中にはたくさんのシャンパンやワイン。

そして大きなデスク。

……マジでこんなかにいんのかよ……

助けを求めて後ろを見ると……

羽切は頼むというような真剣な顔で俺を見つめている。

そんな羽切を見ているとここで黙っている俺がバカみたいに思えてすんなりと車の中に入った。