「そんな事して…もしかして、寂しいのかな?」

「え?」

「こっちにおいで」

そう言うと、私の手を取り、バルコニーから屋上に続く階段に近づくと、そのまま私を抱きかかえるようにすわりこむ。

「あ、あの、海鈴さん?」

「ここなら、アレスが探しにきてもばれないだろう。仕事を放置して探しにきたから、きっと探していると思うけど…」

「……?」

「僕も、いのりとこのまま一緒にいたいから」

海鈴さん…。海鈴さんは、やっぱりなんでも私のことをわかってくれる。それが、とても嬉しい。

「はい。ありがとう、ございます」

彼の腕に手を添え、その胸に寄りかかると形のいい手が私の頭をなでる。

「いいえ。それにしても、今日はとてもいい天気だね」

「はい」

「いのり、覚えているかい?初めて出会った時も、こんなにいい晴天だったね」

「はい。あの時と今と違って、真夏でしたけど…晴天でした」

「うん。飛ばされた帽子を拾うとか…今、思えばとてもベタな出会いだったね」

そんな事、出会った時に言われてたっけ…。あの時、出会った時のことは、よく覚えている。もちろん、体調が戻ったばかりのころは覚えていなかったけれど…今は、きちんと思いだせている。