ただ、目が覚めて、海鈴さんの姿を見た瞬間、とても安心していまい彼に抱きつきながら涙を零した記憶は鮮明に覚えている。

それから、数日はなにも思い出せなくて、呆然としている事が多かったけれど…今は、少しだけ思い出したことがある。

それは、私のお父さんの事だ。私が半神で、お父さんはこの天界の創設者と言うこと。その事実だけが、頭に浮かび、なんの抵抗もなく受け入れた。


悪夢を見ていた時のことも、ほとんど覚えていなくて…思いだせるのは、誰かに言葉を囁かれ、抱いて、傍にいてくれたこと。きっと、それは海鈴さんだと思う。

それ以外、誰も思い浮かぶ者はいないから…。


「寒く、ないかい?」

「平気ですよ。海鈴さん、暖かいので」

「それは、良かった。でも、体調が戻ったばかりなんだから、もう部屋に戻ろう」


「あ…う、うん…」

抱かれた身体に手を回し、背中に触れると、海鈴さんが少し不思議そうに顔をかしげた。

「いのり?」

「海鈴さんも…お仕事に戻るんですか?」

「え?あ、うん…まだ、雑務が残っていてね。いま、いのりを探しにいくために、放置してしまったから…戻らないと」


「そう、ですか…」

寂しいな…。目が覚めてから、誰かが傍にいない時間が怖くなっていた。だから、一人になると外に出て、怖いことを忘れるかのように物思いにふけることが多い。そうしているうちに、誰から心配して探してくれるから…。子供みたいだけれど、なんか、寂しくて、怖い。



そんな私の気持ちを察したのだろう。何か考えるように黙りこんだあと、海鈴さんはふっと笑みを零し、私の手を取った。