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「シャカ様…本当にこれで良かったのでしょうか?」


「お前は…まだ、それを言うのか」

時同じく、とある場所でその光景を見守る者が二人いた。


「これは、グレン自身が出した答えだ。それに、今更、いいも…悪いもない。起こしてしまったことで、後戻りなんて出来ないんだ」

シャカは男の言葉をあしらうと、再びその光景を見つめる。

「申し訳ありません…」

「……」

「ですが、ことは上手く行ったみたいですね」

「そうようだね。今は、思いだせないけれど…少しずつ思いだすだろう」

「そうですか。あの、グレン様との記憶は…」

「無かったことになる。矛盾してしまうところは、きっと海鈴との記憶だと思うだろう」

「……」

「それでいいんだ。それが、彼女の幸せで、かれの幸せなのだから。どのみち、どちらも取るなんてことは、神であろうが、人間であろうができやしない。それが、世界の流れと言うものだ」

少し神妙な空気がながれた。沈黙がその空気をおおうと、シャカはまるで独り言のような、誰かに問いかけるように口を開く。


「君とした約束を、私は守ったようで守れなかったな」

「…え?」

「いのりを必ず幸せに、泣かせること、苦しめることをしないと約束をしたが…おおかた、私もグレンと同じで嘘つきだ」

「…あの、シャカ様?」

「私はしばらく、姿をくらまそう。記憶をなくした彼女はきっと、私のことも覚えてはいない。すべて、この世界にきた時にもどる」