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「……ん」
その日の夜、太陽が沈み、美しい月が空高くあがる。
部屋には暗闇が広がったころ、わたしは重い瞼をあげた。
あれ…。
持っていたはずの本は手にはなく、床に無残にも落ちている。周囲はくらく、月明かりがカーテンの隙間からかすかにみえた。
わたし、いつの間に寝ていたんだろう。本を読んで、少し眠気が来たのは覚えている。きっと、そのまま、無意識に寝ちゃったんだ。
手を伸ばし、思いきり背伸びをする。落ちた本を拾い、テーブルにおきベッドに近づく。
「…海鈴さん?」
ベッドで眠る海鈴さんに近づくと、珍しく穏やかな顔で眠っていた。
顔色もよくて、声を掛ければ目を覚ますのでは…と、思うほど。
でも、そんな事は、ないだろう。そっと手を伸ばし、頬に掛かる髪の毛を払う。
その頬は少し温かい。そんな変化にホッとして、わたしは離れた。
そして、語りかけるような声でいう。
「海鈴さん?夜になりましたので、お風呂に入ってきますね」
「……」
反応はない。でも、それでもいい。
そう囁き、私は部屋のドアを開ける。夜会のせいか、いつも以上に他者の気配は感じられない。でも、おかしいな。アレス、部下を残して行くって言っていたのに、なんでドアの前に誰もいないんだろう。
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