目は挙動不審だったと思う。グレンさんと男を交互に何回も見つめていると、男は笑みをこぼし腰に手をあてる。



「そうか。それは仕方が無い。あまりにも暇だったから、噂に聞く海鈴の花嫁を見に来たんだ」


「それならもう十分みただろう。もう帰ればいい。ここは、お前のような神が来る場所じゃない」


行くぞと。と、グレンさんは握った私の手をひき男の横を通り過ぎる。その時、目があった。



「あ…」


「…どうも、花嫁さん」


ほんの一瞬だった。なのに、その瞬間だけスローモーションになったかのように感じ、脚が止まった。



あの人、わたしは知っている。お父さんに似ているからとかじゃない。なんだか、私の魂が彼に反応している気がしてならない。


「あ、あの」


「いのり」


グレンさんの声に呼ばれ彼を見れば「黙れ」と顔が物語っている。思わず言葉をつぐめば腕を引かれる。それでも、男に視線を送ると、男は人差し指を唇に当てる。



「また、会えるから」


唇の動きに思わず息を呑む。同時に胸騒ぎがした。何かが起こる。そんな予感が不安を呼んだ。