そう思い歩き出すと、あ!と、アレスは声をだし微笑みを浮かべた。


な、なに?急に。

目を少し見開き、アレスの顔を覗き込むと彼は言う。


「しかし、いのり様は不思議な方ですね」

「な、なに?いきなり」

「いえ、ただ、あの方はいのり様が大好きなどだと、実感しました。眠っている間、何回も様子をみに来ていたんですよ?」


それって、海鈴さんのことかな?さっき、聞こうと思っていたこと。アレスから話を振ってくるとは予想外だ。



「酷くうなされていたみたいですね?そばにいると頑なになっていましたけど、我らの王も忙しいので、仕事に戻って頂きました。けど、部下いわくソワソワしていてらしくなかった、と」



そっか。やっぱり、海鈴さん来てくれてたんだ。胸がポカポカと暖かい気がして、思わず胸元を握りしめる。


「そう、だったんだ。あとで、海鈴さんに御礼を言わなくちゃ。きっと、夜会でのことも知っているだろうからね」


わたしの言葉にアレスはポカンとした表情を浮かべる。

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