『ねぇ、いのり?聞こえるかい?』



あ…また。もう何度も私の夢に出てくる彼。

『私に…なにか…用事、なの?』

その問いに何も答えない。


『あなたが誰なのか、教えて。どうして、私の夢に何回も出てくるの?私の母親となんの関係が?』


真っ暗の世界で私の声だけが響きく。数秒の沈黙のあとにその声が聞こえた。

『大丈夫。すぐ、会えるから』



会えるから?脳内で復唱する。どういう意味だろう。

『あの…』

『すぐ…会えるから。必ず』



かな、らず…?

『そう。必ず』


その言葉を最後にもう、何も聞こえなくなった。

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