彼はきっと待っていたのだ
わけの分からぬ この儚き世界で待っていたのだ

私は目を閉じる
そして、おやすみ と呟き
一日を振り返る間もなく、吸い込まれていくのだった

そう 出会いも何も、考えていなかった
私が今、生きている世界が私の「現実」であり
それ以外は全て「夢」だ

そこに何の疑問を抱かないし、抱かれない


しかし、彼はいるのだ
時々現れては、私の手を握るのだ
会いたかった、という息を漏らしながら


声は聞こえない
でも、確かに感じるし通じる


彼は背が高い
身長も教えてくれた

一生懸命手を握って
私が不安なのを察して 強く、強く握ってくれる


そして、一瞬にして消える
あまりにも短すぎる
いっそ、このまま目を閉じていたい
私が「現実」だと定義づけた世界ではなくて良いのだ
そのことさえ考えてしまう

夢のような一時なのだ