「…あぁ、母さん和泉原通ってたんだっけ?」
そういえば…と思い出しように尋ねれば、彼女は至極嬉しそうに頷いた。
「今でも昨日のことみたいに覚えてるわ。あの瞬間のこと」
あの時あの瞬間あの場所に立ち会えたことは奇跡みたいだったの、と。
彼女はとてもとても嬉しそうに目を細める。
うっとりと、恋をしているかのように。
まるでその光景が目の前に見えてるかのような表情に、號樹はごくりと息を呑んだ。
そこには見たことのない母親の姿。
「私のね、初恋の人が踊ってたんだ」
先輩だったんだけどね、と言いながら顔を赤らめ両手で頬を押さえる彼女。
その姿が恋愛話をしている號樹のクラスメートの女子たちの姿と重なった。


