あの日もアサガオが咲いていた。





ウトウトと首は確実に船を漕いでいる。


重力に逆らうことなく意識とともに少しずつソファーへと沈んでいく体。

目蓋は持ち上がる力もなさそうだ。


少しだけ、夕食が出来るまで現実とさよならしよう。


そう思い號樹が微睡みの先に意識を委ねようとしたとき。




「にーちゃ。これ、なぁに?」




くいくい、と服を引っ張られる感触と自分を呼ぶ可愛らしい声。

その二つの感覚に號樹は足を踏み入れていた世界から意識を取り戻す。


彼にはその声を無視して夢の世界に戻ることなど出来ない。


何せ號樹を呼んでいるのは、可愛い可愛いあの子なのだから。


重たい目蓋を無理矢理上げれば、妹の汐莉が大きな瞳をクリクリとさせながら號樹を見ていた。