だからこそ"学費免除"の言葉に、つい数分前まで今すぐにでも断りたいと本気で思っていた絢也の心が揺れた。
瞳が動揺に歪む。
そんな絢也の心の揺れに隣に座る男も気付いたのだろう。
深くその口元に笑みを浮かべたかと思うと、男はポンポンと絢也の頭を軽く撫でた。
突然の感触に絢也は思わず肩を竦めながら、視線を男に向ける。
「…おじさん…何でそんなに詳しいんですか?」
「おじさんって言うな」
「…オニイサン」
「…ま、いいか」
確かに見た目が若く見える男は、おじさんというよりお兄さんと言った方がしっくりくるだろう。
しかし自分の揺れた思いに気付かれたことが恥ずかしいのか、少しばかり棘を乗せた声と表情で言葉を返す絢也。


